祈りの継承
五百羅漢修復
修復家・長井武志の五百羅漢修復の仕事を伝える
プロジェクト
■修復を記録した千代田路子の写真
修復家の言葉を伝える松山瑞樹のインタビュー映像
長井武志の講演会で構成する「五百羅漢修復 祈りの継承」企画展
2021年12月21日〜26日 日本カメラ財団JCIIクラブ25ギャラリーで企画展開催
■千代田路子写真集「五百羅漢修復 祈りの継承」発刊
羅漢像と修復家が共有するもの ― その緊密な関係
約400年前、江戸の仏師・松雲元慶が彫刻した五百羅漢像。
風雪に耐え歴史の痕跡を残す独特な美しさをもつ。
その像を後世に伝えようとする人々の願いを受け、修復に取り組む長井武志氏。
その姿に心を打たれた写真家・千代田路子がその工程を写真で、
松山瑞樹が修復家の言葉をインタビュー映像で伝える。
2022年4月8日−7月31日
2021年12月25日
2021年12月21日―26日
2021年12月20日
2021年12月1日
クラウドファンディング プロジェクト 公開
2021年11月22日 「五百羅漢修復 祈りの継承」サイト 公開
修復家
長井武志
東京藝術大学・大学院 美術研究科(保存修復技術・彫刻専攻)修了。研究生、非常勤 助手を経て(株)東京文化財修復所設立に参加。その後、(有)古文化財保存修復研究所を設立、代表を務める。指定文化財(仏像・民俗資料等)を含む300体を超える修復に携わる。平成14年、目黒五百羅漢寺蔵 普賢菩薩像の修復を皮切りに、令和2(2020年)年までに40体の羅漢像等の修復を行う。
現在私たちが寺院や博物館で目にする仏像は、実は過去に幾度かの修理を受けて現在にいたっています。
仏像の修理は「尊い信仰心」をもった人々が同じ想いを後の人々にも継承したいと考えた証しでもあります。
仏像はいろいろな素材で造られていますが、そのどれも時代の経過とともに傷んでいくという宿命も併せ持
っています。仏像の修復は制作した仏師の考えを尊重し敬意を払うことが大切なんです。私は、この五百羅
漢像を発願・制作・完成まで成しえた松雲元慶師の偉業を次の世代の人々に手渡すことを使命としています。
映像作家
松山瑞樹
福島県福島市出身。独学で写真を学び、営業写真を経てフリーランスフォトグラファーとして活動。東日本大震災被災後、福島を離れ現在は会社員として光学メーカーにて技術マーケティング及び技術評価を担当。写真制作に加え、近年では映像制作に取り組む。『たった一人でも良い。発想の触媒となる写真・映像作り』をテーマに制作活動を進行中。
木曽に行きました。仏像修復に用いられる檜は木曽の山林で長い年月をかけて大切に育てられてきました。樹齢300年を超す木曾檜を前にすると、そこに関わる人々が後世に伝えるために大切にしてきた「想い」が伝わってきました。修復される羅漢像、写真、映像。方法は異なれど、人々の想いを伝えることになんら変わりはありません。伝えるべき事柄を後世に伝えるために映像制作に臨みました。
information
「五百羅漢修復 祈りの継承」展・天恩山五百羅漢寺で開催(終了しました)
・開催期間:2022年4月8日(金)~7月31日(日)9:00-17:00
(拝観受付 16:30まで)
・開催場所:天恩山五百羅漢寺
〒153-0064 東京都目黒区下目黒3丁目20−11
TEL: 03-3792-6751 http://rakan.or.jp/
・展示: 千代田路子 写真作品展示:約50点
松山瑞樹 映像作品展示
・講演会: 羅漢像修復がテーマの講演会開催予定
・共催: 天恩山五百羅漢寺、Idea Works . P
「五百羅漢と修復」オンライン対談 開催(終了しました)
天恩山五百羅漢寺での企画展に合わせて、仏像修復家の長井武志さんと天恩山五百羅漢寺の執事・学芸員の堀研心さんとの対談をオンラインで行います。五百羅漢寺や五百羅漢について、仏像修復についてなど対談します。
千代田路子写真集「五百羅漢修復 祈りの継承」発売中
「現在、私たちが寺院や博物館で目にする仏像は、実は過去に幾度かの修理 を受けて現在にいたっています。」
長井武志氏のこの言葉を聞いて、私は仏像は人の手によって継承されているもので、別な言い方をすれば、修復されなければ壊れてしまうものなのだということを改めて学びました。そして、仏像修復について多くの皆様にお知らせしたいと思うようになり、写真集という形にまとめました。この写真集には、修復についての、修復家・長井武志氏の解説、五百羅漢寺執事の堀研心氏の羅漢寺と羅漢像についての紹介、そして、写真評論家の上野修氏に作品についての評論を寄稿していただきました。
写真点数80点、100Pの充実した内容の、美しく端正な写真集に仕上がり
ます。(千代田路子)
■A4変形(H280×W200)
■表紙、見返し、本文100P
■デジタル印刷(4C)
■無線PUR並製(雁垂れ)
■スリーブケース付き
■価格 4,000円(税込)
■販売
りぼん舎/ Amazon
発刊日 2021年12月20日
著作者 千代田路子
発行人 吉野千枝子
写真 千代田路子
編集 吉野千枝子
デザイン 石山さつき
発行所 りぼん舎
印刷・製本 日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社
「五百羅漢修復 祈りの継承」講演会の模様
12月25日(土)に開催された「五百羅漢修復 祈りの継承」講演会の模様を公開いたしました。
プログラム
■春風亭弁橋 新作落語「お次の羅漢様どうぞ」
■長井武志 羅漢像修復について
■長井武志、堀研心 対談(司会 千代田路子)
ギャラリー
応援メッセージ
仏師・彫刻家
加藤巍山
伝教大師最澄様の言葉に「一隅を照らすものは国の宝なり」というものがあります。その場所で一隅を照らし続けること。修復というお仕事はその一隅を照らし続けることかもしれません。誰かが為さねばならないこと。そして、その記憶を閉じ込める写真。歴史への畏敬と祈る思いが美しさを際立たせています。修復は時を紡ぎ、写真はその”時”を閉じ込め、それぞれに未来に伝える。時は積み重なり、そこには深さがある。古から現代まで、変わらぬ人間の祈りがあり、生きとし生けるものの尊厳がある。それは人間が人間である証明。冒し難い領域。護り伝えるもの。千代田路子さんのお仕事と長井武志さんのお仕事に心からの敬意を表しまして、このプロジェクトが成し遂げられますようお祈り申し上げます。
朝日新聞メディアプロダクション・Photo director
外山俊樹
「祈りの継承」に寄せて
確かに写っているものは、五百羅漢像の修復作業なのであるが、千代田路子氏の撮影スタンスは、修復家・長井武志氏の仕事を客観的に見るというより、この現場に立ち会った同志として羅漢像に向きあっているようだ。工房内の作業の写真は、モノクロであるが故に時代性が希薄になり、仏師と修復家の姿が時空を超えて重なり、今そこで像が制作されているように見えてくる。写真家の眼差しは、ドキュメンタリーとしての記録や説明を超え、遥か三百年以上前に像を彫り上げた仏師・松雲元慶の精神性、羅漢像に祈りをささげた市井の人々の思いにたどりついたようだ。
仏像イラストレーター・文筆家
田中ひろみ
目黒にある五百羅漢寺。開基は、松雲元慶という僧侶です。大分の羅漢寺の五百羅漢石像を見て、五百羅漢像を造ることを決意。ちなみに「羅漢」とは、悟りをひらいた高僧のことです。その後十数年かけてたった一人で、五百羅漢像を含め釈迦如来座像など計536体の群像を造られました。現在残っている像は、305体。歴史的文化的に価値が高く、東京都の重要文化財に指定されています。木で造られた羅漢像は、年月ともに痛みが出てきています。私は全国を周りいろんな仏像を見てきましたが、修理せずに放置され、手足が取れてバラバラになってしまった仏像も多く見てきました。そうならないように、今も信仰の対象となっている羅漢像を修理して継承して行くことがとても大切だということを、多くの方に知っていただきたいと思っています。
写真家
吉田繁
想いを込める、救いを伝える
千代田さんは、その辺に落ちている石ころでもご自身の想いを込め、それを表現にかえる力がある作家だ。一方、今回、修復を担当されている長井さんは、仏像の彫刻家としても活動されていて、古い時代の精緻な仏像を単に模倣する彫刻ではなく、今の時代の人が必要とする、手に取ったときに心に湧き上がる優しさというのを仏像に込めることができる作家だ。こうしたお二人が、修復という先人が作ったものを今に蘇らせる作業、記録していく作業をされている。本来あるものを壊すことなく、それでいて、今に通用するものとして蘇らせていくという力が仏像にも、写真作品にも込められていると思う。
落語家
春風亭弁橋
「継承」。このことばは我々噺家(落語家)も切っても切れない縁がある。羅漢像たちは彫られてから現在に至るまで時代の流れ、災害などによって傷つく度、何人もの手によって修理、修復を繰り返し現在に残ってきた。我々の根多(噺)も同じく、何人もの手が加わり現在に残ってきた。どちらも過去のものを現在で手を加え、そして未来へつなげている。千代田さんがカメラで捉えた羅漢像の修復を見て私は思った。現在で新たな息を吹き込み生かすこと。それが未来へつながるのだと。私が落語(噺)を残すために引き継いだ落語を現在で生かすことだ、と羅漢様たちに教えを頂いた。
天恩山 五百羅漢寺 執事・学芸員
堀研心
通常、文化財(羅漢像)の保存修復の現場は一般公開しない。当然、修復の過程は「記録」する。「記録」は料理のレシピのようなもので、羅漢像の姿かたちは記録しても、かかわる「人」の姿・存在は記録しない。誰が、どのように修復しているのか、なぜ「保存修復」しなければならないのか。千代田路子氏の作品は、単なる修復過程の記録ではない。修復家と羅漢像が対峙する、静謐な「時間」を写しだす。千代田路子氏の作品から、「時間」が祈りとなることを、「時間」=「祈り」を継承することが「文化財の保存修復」の意義であることを感じていただきたい。
Report
「五百羅漢修復 祈りの継承」展 天恩山五百羅漢寺(目黒)で開催
2022年4月8日~10月10日まで羅漢像が多数展示されている羅漢堂に修復工程の写真や映像を展示しました。ガラス張りの羅漢堂の構造を活かして内外から鑑賞できるようにしました。多くのご参拝の皆様にご覧いただきました。
「五百羅漢修復 祈りの継承」展 日本カメラ財団 クラブ25ギャラリーで開催
2021年12月21日~26日まで写真、映像展示、講演会をIdea Works . P主催で開催いたしました。たくさんの皆様にご来場いただきました。そして、開催にあたって多くの企業、団体様から協力、協賛、そして各方面の皆様から応援メッセージをいただきました。深く御礼申し上げます。
*文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業として開催